丁寧さは現場で育つ
1.マンション管理の仕事の物語
マンション管理人の代行業務をしていた頃、
私はあるマンションを長期で任されていました。
毎日の基本清掃を終えると、必ずマンション全体を見回りました。
すると── 今まで全く気づかなかった場所が、ある日突然見えてくるのです。
「ここ、汚れていたんだ」
「こんなところに埃が溜まっていたのか」
誰も気づかなかった小さな場所、
隠れた場所、
掃除しようと考えもしないような場所が、
ぽつりぽつりと見えてくる。
それを一つひとつ丁寧にきれいにしていくと、
住民の方が声をかけてくれました。
「こんなところまできれいにしてくれるんですか」
「ここまで掃除するんですね」
その言葉が胸にしみました。
誰も気づかなかった汚れがきれいになっていくのは、本当にうれしいものです。
2.細部を仕上げる仕事の誇り
ある日は外壁の埃が気になり、何日もかけて水洗いしました。
また、アルミにできた白い錆を見つけたときは、
ビルのメンテナンス会社に電話して、
錆の落とし方と必要な洗剤を教えてもらいました。
その洗剤を使い、アルミの手すりや枠を丁寧に磨いて回りました。
住民の方々はとても喜んでくれました。
「こんなにきれいになるんですね」と言われるたび、 胸の奥に誇りが湧きました。
誰に命じられたわけでもない。
評価されるためでもない。
ただ、自分の“きれいさの基準”に合うまで妥協せず、
使う人が気持ちよく住めるようにと努力した。
その積み重ねが、私の仕事の誇りになりました。
3. 丁寧な仕事が生んだ出会い
シャッターの錆を落とそうと奮闘していたある日、
向かいの図書館に来る人が私の姿を見ていたそうです。
「あそこまでやるのか。ご苦労なことだ」
その人はそう思ったと、後で教えてくれました。
やがてその人が、偶然にも私の後任になりました。
引継ぎのとき、私は自分がやってきたことを丁寧に伝えました。
その方は感心しながら聞いてくれました。
「ここまでやるのか」と驚きつつも、
私の言うことと、私のやってきたことが一致しているからと納得し、
私が自発的にやっていた壁掃除まで引き継いでくれました。
その方は時々、私の担当マンションへ、話をしに来てくれました。
私がその仕事を辞めてからも、時々、近況を告げるラインをくれるようにもなりました。
思わぬところで、友人ができたのです。
◆ 次回予告(第③章)
次回は、 「実意丁寧はなぜ心を整えるのか」 仕事の現場での体験から見えてきた、 丁寧さの本質と心の整い方について語ります。
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