創造の喜びを知る
1.チョコレートづくりの体験
思想をどれだけ学んでも、体験してつかんだものにはかなわない。
私はそのことを、ある小さな出来事を通して深く理解しました。
ココロちゃんのカウンセリングを受けていたとき、
「チョコレートをカカオ豆から作ってみませんか」
と勧められました。
理由は聞きませんでした。
ただ、言われたことを素直にやってみようと思ったのです。
すりこ木とすり鉢を買い、炒ったカカオ豆を取り寄せました。
すり鉢に豆を入れ、すりこ木でつぶし始めると── 最初は固く、力がいります。
腕が疲れるほど、なかなか粉にならない。
そして油が出て液体になるまでは、相当な時間がかかりました。
しかし、ついに液体がにじみ出てきた瞬間、
カカオの香りがふわっと立ち上がり、 変化する感触が何とも言えずうれしくて、
胸がわくわくしました。
砂糖を入れ、さらにこねていきます。
黒くどろりとした液体になり、ミルクを混ぜ、型に流し込む。
冷蔵庫で冷やし、翌朝取り出すと── そこには、ちゃんとチョコレートができていました。
自分で作ったものは格別で、 静かに喜びが湧き上がるのを感じました。
丹田からふつふつと湧くような、深い喜びです。
この体験は、私に「創造の喜び」というものを教えてくれました。
2. 丁寧さは“細部”に宿る
しかし、この体験はそこで終わりませんでした。
作ったチョコレートをココロちゃんの場に持っていくと、
「少し変なにおいがするね」と言われました。
最初は理由が分かりませんでした。
何度作って持って行っても、同じことを言われる。
そこで私は、原因を探し始めました。
銀紙に包んでみる。
持ち運び用のかばんを変えてみる。
かばんの中をきれいにする。
チョコレートの容器を変える。
保管場所を見直す。
作る工程だけでなく、 保管、移動、持ち運び──
すべての工程に気を配るようになりました。
そしてある日、ココロちゃんが言いました。
「もう変なにおいはしないね。卒業だよ」
その瞬間、私は気づいたのです。
私は“実意丁寧”という生き方を学んでいたのだと。
丁寧さとは、作業の一部ではなく、生き方そのもの。
細部にまで神経を行き渡らせて、一つの課題をやり遂げること。
その姿勢が、心を静かに整えていくのです。
3. 実意丁寧は、心を整える
実意丁寧とは、単なる自己満足ではありません。
最終的には、仕事の果実を受け取る相手の心に届くものをつくることです。
チョコレートづくりなら、食べてくれる人。
マンションの清掃なら、住民の皆様。
自分の基準だけでなく、 会社の要請だけでもなく、
受け取る相手の気持ちまで想像して仕事を仕上げる。
その姿勢が、心を整えます。
人は、自分のためだけに働くと、心が荒れます。
誰かのために働くと、心が整います。
実意丁寧は、そのことを教えてくれる生き方です。
◆ 次回予告(第②章)
次回は、 「実意丁寧が仕事の現場でどう生きたか」
マンション管理人としての体験を通して、 丁寧さがどのように人の心をつなぎ、 誇りある仕事へと育っていったのかを語ります。
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