現場で起きた変化
私は、知識という安全な岸から一歩離れ、
相談者の心という水面にそっと手を伸ばすようになった。
すると、世界は少し違う姿を見せてくれた。
相談者の感情は、
押しつけられることなく、自然に深まっていく。
私が判断を控え、ただ受け止めると、
相談者自身が自分の心に触れやすくなる。
時には、私の心にふっと浮かんだ思いを
そっと投げかけることがある。
その言葉が小さな石のように心の水面に落ち、
静かな波紋となって相談者の内側へ広がっていく。
その波紋が、
押し込められていた感情をそっと掬い上げることがある。
その瞬間、
「心を見る」ということの意味が
確かに形を持って立ち上がる。
(「心を見るということ⑤」につづく)
(花町宰)
