知識で見るということの影
私は相談者の心を理解しようとするとき、
心理学の知識を手がかりにしていた。
それは、地図を見ながら風景を眺めるようなものだ。
地図は便利だ。
しかし、地図ばかり見ていると、
風の匂いも、木々の揺れも、
その人の声の震えも、
いつの間にか視界からこぼれ落ちてしまう。
知識は過去の蓄積であり、
心は今この瞬間にしか存在しない。
職場での会話でも、
家族との対話でも、
私たちはしばしば「知っているはずの何か」を先に探してしまう。
その瞬間、相手の心の風景は、
ほんの少しだけ見えにくくなる。
(「心を見るということ③」につづく)
(花町宰)
