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話を聴く⑨

心に絵が浮かぶ

あるカウンセリングでのことです。

話を聴いているうちに、相談者自身が自分の状態に気づき、

その気づきを絵として描いてくれた場面がありました。

その方が描いたのは、一枚の「池」の絵でした。

池の中には、水の底へ向かって沈むように、いくつもの建物が描かれています。

しかし、池の周りの岸の上には、何も建っていません。

相談者の説明によれば、建物は“感情”、池は“心”を表しているとのことでした。

建物が水の下へ沈んでいるのは、感情がすべて抑圧され、

無意識の世界へ押し込められている状態を示しています。

そして岸の上に建物がないのは、感情を表に出さない癖がついていたからだと言います。

その方は絵を見せながら、

「自分は幼い頃から感情を抑え込み、表に出さないようにしてきた」

と静かに語られました。

ところが、その気づきを境に、まるで抑圧の蓋が外れたかのように、

ご自身が感じてきた豊かで繊細な感情を、自由に語れるようになっていきました。

これは、対話の中で相談者自身が“自分で気づき、見極めた”象徴的な事例です。

(「話を聴く⑩」につづく)

(花町宰)

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