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話を聴く⑩

1. 背景を見抜く質問

これまで、ココロちゃんが教えてくれた「聴く」という行為について、

私自身の経験を手がかりに、一つひとつ辿ってきました。

ここであらためて、その全体像に目を向けてみたいと思います。

「相談してくる人の言葉をじっと見極める。

相談してくる人の心の状態を見抜く。

同情しない。

見極める。

どうしてそう思ったのか、背景を見抜く。

どうしてそう考えたの? と問い返す。

自分が自分で答えを発見できるために。」

(2024.12.30「相談者の心を見極めよ」より)

今回は、この中の

「どうしてそう思ったのか、背景を見抜く」

という一点に、そっと光を当ててみたい。

かつて私は、ある友人に話を聴いてもらいながら、

自分の怒りの底に沈んでいた“背景”を探ったことがありました。

友人が静かに投げかけた

「なぜ、そう考えたの?」

という問いに導かれるように言葉を紡いでいくうち、

私は、自分でも気づかぬまま押し込めていた感情に触れたのです。

2.抑圧していた感情に気づく

若いころ、私は深く尊敬する人のもとで働いていました。

その人の背中を追いかけるように日々を過ごし、

その尊敬は、私の中で揺るぎない灯のように輝いていました。

やがて私はその人のもとを離れ、別の仕事に就きましたが、

尊敬の念は変わることなく胸の奥に残っていました。

しかしその後、思いがけず、その人や会社から いくつかの不利益を受ける出来事が続きました。

そのたびに、

「これは私の進路を妨げようとしているのではないか」

という影が心をかすめました。

けれど、尊敬という名の光が強すぎたのでしょう。

怒りを抱くことを自分に許さず、

その感情を深い水底へ沈めてしまったのです。

友人に話を聴いてもらい、

「どうしてそう考えたの?」と問われたとき、

私は、言葉を探しながら、

自分が封じてきた怒りの存在をはっきりと見つけました。

その瞬間、

長いあいだ沈黙していた感情が、

ようやく自分の名を呼んだように思えました。

怒りを認め、

その怒りが生まれた道筋を語り直すうちに、

私は自分の感情の輪郭を深く理解し、

それとともに、怒りは静かにほどけていきました。

これはまさに、問いに導かれながら

自分自身の中に答えを発見した体験でした。

自分で答えを見つけると、

これまでの行動や感情の意味が結び直され、

そこから自分で修正をかけることができるようになります。

🤔

「どうしてそう思ったのか、背景を見抜く」

「どうしてそう考えたの? と問い返す」

この二つは、まるで呼吸のように、

互いを補い合いながら働くのかもしれません。

聴き手がすでに背景を見抜いている場合でも、

あえて問い返すことで、

話し手が自らその背景に触れられるようにする。

そのための問いなのだと思います。

いずれにしても、

話し手が自分で答えを見出せるように聴くことが大切です。

それによって、相手を依存させることなく、

その人自身が、自らの道を歩き始めることができます。

(「話を聴く」完)

(花町宰)

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