心に絵が浮かぶ
あるカウンセリングでのことです。
話を聴いているうちに、相談者自身が自分の状態に気づき、
その気づきを絵として描いてくれた場面がありました。
その方が描いたのは、一枚の「池」の絵でした。
池の中には、水の底へ向かって沈むように、いくつもの建物が描かれています。
しかし、池の周りの岸の上には、何も建っていません。
相談者の説明によれば、建物は“感情”、池は“心”を表しているとのことでした。
建物が水の下へ沈んでいるのは、感情がすべて抑圧され、
無意識の世界へ押し込められている状態を示しています。
そして岸の上に建物がないのは、感情を表に出さない癖がついていたからだと言います。
その方は絵を見せながら、
「自分は幼い頃から感情を抑え込み、表に出さないようにしてきた」
と静かに語られました。
ところが、その気づきを境に、まるで抑圧の蓋が外れたかのように、
ご自身が感じてきた豊かで繊細な感情を、自由に語れるようになっていきました。
これは、対話の中で相談者自身が“自分で気づき、見極めた”象徴的な事例です。
(「話を聴く⑩」につづく)
(花町宰)
